その03:響きを前に

送信日時 : 2004年 6月 29日 火曜日 20:43

「発声を変えよう」をお読みいただきありがとうございます。というかやるだけのことはやってみようというかなり自己満足的にやっているにすぎないことなのかもしれませんが、もしこれによってイメージが膨らんだ、という方がいらして少しでも歌うときの意識が変わることがあるのならば、感謝です。

今回は「響きを前に」ということを書いてみます。よく「響きが後ろに落っこちてる」ということを言われますね。実は私自身、いまだにこの「響きを前に」という壁を越えられずによじ登っています。本人は汗まみれになって「前に」出そうと懸命なのに「もっと前に」と常に言われ続けているのです。あたかもそこに立体的な響きの源があるかのような気がしています。共に美しい響きを探しましょう。

前回の「舌を下げて」という表現にクレームがつきましたが確かに誤解を生じる表現でした。何を言いたかったかというと「舌の力を抜いて」ということです。今回の響きを実践する上で「舌の力を抜く」ことは大前提なのです。私はよく高い音になると舌に力が入って「舌があがってる」と注意されることがあるので前回のような表現になってしまいました。舌があがっていても要は力が抜けていれば問題ないと思います。無理に舌を下げるとどうしても舌根の部分で力が入ってしまいます。これをするともわっとして「後ろに落っこちた」感じになります。どうしても音が下がりやすくなりますし、響きが太く、響きが前に集まらないので、声に艶がなくなります。

具体的にどうしたらよいのでしょうか?わかればさっさと自分のものにしていますが、自分でも大体のところしかわかりません。

1のときに書いた響きの場所、眉間から10~20センチ離れたところ。と書いても自分自身まだつかんではいない。そこに口があるような感じで。なんだか聞いたことありますよね。早川は「頭上20センチ上くらいに口があるつもりで」と先週の練習のときに言っていました。よく馬に人参をぶら下げて走らせるとよく走る、なんて聞くけれど、本当かしら。自分も何かぶら下げて響きの場所をそこに感じながら歌うようなつもりで。

よく早川が言ってるのは、(くしゃおじさんって昔いましたけれど)顔をくしゃっとさせて、鼻の上と眉間のあたりに響きをもっていく、ということです。これは効果的だと思います。イメージするきっかけになりそうです。しわが増えたらごめんなさい。でも合唱をしている人は顔の筋肉をよく使うので割合若く見えるそうですね。熱心に取り組むとよいことがあるかもしれません。

響きの場所を探ることは、どんな高さの音を出すときも必要です。「探る」というとまた誤解が生じそうですが、間違っても音を出してから「探る」わけではありません。鼻から息をすって頭を広げて一度息をためるようにして「止めて」音を出す前に準備してください。「どんな高さでも必要」とは、自分の出しやすい音程のときでも、という意味です。よく音程が下がってくると一緒に響きの場所も下がってしまいがちです。

ワンフレーズの中にある音を確認して、少なくともそのフレーズの一番高い音を出せる「高さ」(ドームを高く保つ)を準備してください。私はよく先生から「出す音のオクターブ上を歌うつもりで」と言われます。この準備が非常に大切です。これをしないと下から押したような音になってしまい、音自体が下がり気味になります。

「高いところに上から物を置くような感じで」とよく聞きますね。これは自分のドームを高くしておいて音を上から置くようにイメージしてみましょう。これを自分にとって低い音であってもやってみてください。高い音から低い音へといくときに響きの位置を変えない。逆もまたしかり。ものすごく重要なことです。(と言っている私もまだまだ自分のものになっていない。)特にバッハのように音があっちこっち器楽的に飛ぶときには、これをしないと聴いていて不安定ででこぼこしたような印象を与えるでしょう。

響きを前に考えるときに、ごく最近私が思っていることは「首の後ろを開ける」ことです。あくまでも前に持っていくために、なんですけれど。そして2階、3階、いやいや、8階か10階か? それくらいの高さから音を置くことです。それこそ先週の練習で早川が「ラッパが前後にはいっている感じ」というようなことを言っていましたね。

そう思っていても曲のはじまりならともかく、途中で忘れてしまったりして「いついかなるときでも」ということはまだまだできません。なんでもそうですけれど「できない」と思ったら、そこでストップしてしまいますね。あきらめないで前進いたしましょう。

おまけ
ここで終わりにしようと思ったのですが、9月5日までに時間があるうちにあきらめないでトライしてもらいたいことがあります。もうできている方も大勢いらっしゃるでしょう「巻き舌」です。いまや子音の前取り、なんて高度なことをしている(と私は思う)時代に、「巻き舌」できません、と平気でいるのはどうかと思います。厳しいでしょうか? でも私自身できるようになりたいと思って努力してできるようになりました。20代後半だと思われます。誰もができるわけではないかもしれない。わたしはたまたま運が良かったのかもしれない。でも子供にもこうするんだよ、と教えたらできました。子供と大人は確かにちがうかもしれないけれど、できない方、この機会にお試しください。

舌を上の前歯の少し後ろにおく。ル、と言ってみる言ったらすぐに舌を最初の位置にもどす。最初はゆっくり繰り返し、あまり力を入れずにやる。ウという母音を出さないくらいでよい

慣れてきたら少しテンポを早くする。
r.r.r.r.r.r.・・・・
このときに前歯の少し後ろに舌をすばやく戻すことを意識して、舌をrを発音するために離すときに、溜めていた息を少量(rの分だけ)前に出すような感じ

早くできるように慣れてきたら舌を定位置に置き、思い切って後ろから前に息を流してみる。最初は2,3回しか巻けなくても、2,3回巻けたらしめたもの。きっと長くできるようになる

今現在できるかたでも、前歯のすぐ後ろぐらいの浅い位置でできないかたは、なるべく奥ではなく前のほうでできるように練習してください。

たぶん2ヶ月もあればできると思います。何かの本に載っていたというわけでなく、自己流です。もっと効率的な練習方法をご存知の方はできない方のために是非お知らせくださいね。

幸運を祈ります。