その05:響きを保つ

送信日時 : 2004年 7月 13日 火曜日 0:50

浜松バッハ研究会のみなさま

やっと1番と27番がひと通り歌えるようになりました。27番の方はかなり曲のテンポが速いので音と歌詞をつけるのが精一杯の状況かもしれません。最初は誰でもそうだと思いますから、慌てないで時間があるときには、歌えないところなどを抜き出してテンポをゆっくり、しっかり発音しながら繰り返し練習すると効果があるでしょう。ピアノなども同じですが速いパッセージを弾けないときはゆっくりリズム練習などしますね。やみくもに速く練習してもあまり意味はないと思います。但しゆっくりの中でもそれぞれの子音の特徴は生かしてください。母音をきれいに響かせることもわすれないでくださいね。

きょうはそのゆっくりの練習のときにも意識を欠かすことができない「響きを保つ」ということについて書きます。本当は他の物を用意しておいたのですが先日の土曜の練習で、やはりこれは早くに書くべきだと必要性を認識いたしました。

歌うときのフォームや響きの場所については、もう書いていますが、今回の「保つ」ということはどういうことでしょう。例えば新体操の「リボン」は細い棒にながーいリボンを結んでくるくる、くるくると美しく円を描きますね。ほら、うまく回さないと円が崩れてしまいます。ずーっとリボンが回り続けている様子をイメージしてください。或いは流れる水に窪みでもあるのか水晶のような玉が水に流されずにくるくる、くるくる回り続けている、そんな感じ。

息が流れて響きがずーっと続いている。実際には息がなくなるからずーっとというのは不可能ですがそれは究極的にはN先生によれば「なるべく声帯を閉じないで歌う」ということになるそうです。響きっぱなしの状態で歌うということ。

長い音のとき小さい音量で入ってきれいに母音をのばして歌うことが多いですね。このときなどこの「くるくる」をずっと感じています。「息を流す」と「押す」との違いをどう説明したらよいでしょうか。自分自身さっぱりわからなかったけれどいま言える事は「息を流す」方は前にも書きましたが立体的な響きになるということです。響きが「広がる」という感じ。「押して」しまうと行き詰った三澤先生のおっしゃるところの「何かに張り付いたような音」になる。この違いを早く自分で判断できるといいですね。・・・私自身必ずしもわかるとは限らないけれど。

さて長い音のことを例にしましたが、これはコラールを歌うときも同じです。よく早川が「ぶちぶち切れる」と言っていますが、これは「響きを保って」歌えないからです。4分音符一拍なのに8分音符分しか音を「響かせずに」次の音に移ってしまっているのです。あとの8分音符は「なんとなく」音がする程度になっているのです。それは母音をきれいにのばそう、歌詞を伝えよう、という意志が感じられない、気が抜けた音楽になってしまっているのです。

三澤先生が「気合いでつなげろ」とおっしゃったのは・・・どこだっただろう・・・と探してみたけれど情けないことにわからなかった。ただその時私自身歌っていて周りの音がぶち切れに聞こえていたのは確かです。特にnで響かせることはよく注意されるにもかかわらずなかなかできません。舌の先を上の歯の付け根のあたりに置いてnを響かせるだけだから、そう難しくはないと思います。ということはやはり「響かせよう」とする意識が低い、ということになるのではないでしょうか。「押さずに響かせる」技術と「つなげようとする」気合いと両方で「響きを保つ」ことができるのでしょう。

さて今度は8分音符や16分音符のケースを考えてみましょう。よくメリスマが切れ切れになってしまうのを耳にすることがあります。これはそのひとつひとつの音で声帯を閉じてしまっているからだと思います。おそらく閉じようとしてではなく、無意識に。8分音符だとわかり易いかもしれません。例えば1番の出だしでミソシミーとソプラノが歌います。そのつもりでなくてもあたかもそこにアクセントがついているような歌い方をしていることがあるのです。先ほど4分音符のところであったように最初の半分だけ音を出して後の半分を抜くような形で歌ってみてください。ウサギがぴょん・ぴょん・ぴょん・ぴょんとでも飛んでいるようになるでしょう。・というところで声帯を閉じるのです。これは悪い例です。ソプラノではないから関係ないなどという方はおられないでしょうが、どのパートも同じ事が言えます。

無意識と言うのは気がついていないのですからなかなかややこしいです。特に「マタイは昔から何度も歌っている」という方にこういった自分では気付かない癖ができていることがありがちです。私自身ヨハネを歌っているときに、これは癖になっているな、と感じたことが多々ありました。私にもマタイを歌う中で、知らず知らず癖になっていることがあるかもしれません。いやきっとあるでしょう。

先日の練習で1番の34小節あたりから1と2の掛け合いになるところで第2コーラスが入った後、第1コーラスのソプラノが「8分音符を切れ切れに歌っている」と早川から指摘されました。あくまでも例えの一例ですが、先ほどの「癖」を考えるとき、このケースは癖になっている可能性がある、と私は思いました。なくて七癖、歌も同じではないでしょうか。

こうした癖を自分で知るためにも(母音だけでコラールを歌ってみる、と以前書きましたが)普通の歌詞でゆっくり「響きを保って歌う」ということも大いに役立つはずです。母音を響かせてさらに子音を入れる練習にもなるでしょう。もちろん曲によって「ここはマルカート気味に」など指示がある場合はそれに従いましょう。

以前に「響きの位置を保つ」ことを書きました。「響きを保つ」ということには「息を流して」響きが途絶えないようにすると言う意味合いと、響きの位置を変えずに歌うと言う意味合いとあるように思いますが、結局それらは異なることをいっているようで同じところにたどり着くような気がいたします。どちらもとても大事なことです。

本格的な夏の到来を感じます。9月になるのもあっという間でしょう。しまった!と言わないためにも音とリ、歌詞付けのみでなく、発声のことを実践してみてください。毎日ほんの5分10分でもいいのです。鼻の奥を広げて止める(歌う前のフォーム作り)イメージトレーニングをするだけでも何かが変わると思います。仕事が終わって夜に声を出して練習するなんてとんでもない、という状況の方もおられるでしょう。少しゆとりのある方はこれにハミングを付け加えてみるのも良いでしょう。ハミングが立体的響き、かつその響きが前に来るよう心がけてください。後ろに落っこちないでね。「押す」こともしないでくださいね。・・・うるさい小姑のようになってしまいました。そろそろ失礼します。

どうぞ体調を崩さずお元気でお過ごしください。