その06:子音について

送信日時 : 2004年 7月 23日 金曜日 0:23

浜松バッハ研究会のみなさま

毎日猛暑が続いていますが、いかがお過ごしですか?
我が家は夜が遅いので、こう暑いと日中つい昼寝などしてしまうこともあります。働いておられる方には怒られてしまいますね。朝起きてすぐは体がまだ眠っているから2時間ぐらい歌わない方がいいそうですが、お昼寝の後もそうなのかしら、などと贅沢にも悩んでしまいます。といいつつそれほど歌っているわけではないのだが。

私が発声を習いはじめて一番最初に難しいと思った子音はlでした。 rの方が巻舌もあって難しいと思っていただけに意外でした。今思えば上の歯のすぐ後ろに舌を持っていき弾かせるだけのことなのだけれど、その当時私にはそれさえよく分からなかった。lを歌う度に発音を指摘されよくわからないままに直されました。日本語ではドイツ語のlを発音する時にやるようにlで舌を弾いて話すことがほとんどないから無理もなかったのかもしれません。次にsです。歌っていると先生に笑われるのです。決まってsの発音がthになった時でした。その時自分では聞き分けができませんでした。今でも自分の声で歌い分ける自信がありません。

さらに摩擦音は未だに苦手です。例えば「残念」という時に上と下の歯を合わせて摩擦音を発音しますか? それこそ残念ながら私は歯を合わせることをせずに言ってしまいます。日本語ではそれで十分通じるのですが、ドイツ語でsonneと言う時、摩擦音をしっかり出さずには通じないと思います。歌う時にもそれを出すか出さないかで聞こえてくるものは当然に異なります。

unsreという言葉が1番によくでてきますね。この単語は私の(というか日本人の)苦手なウの母音+nの響き+sの摩擦音+re(巻く)となっていて、私は発音しにくい言葉だと思っています。1番を歌っている時にuの浅い響きが耳につくことがあります。興ざめしてしまいます。unsreに限らず「この言葉は気をつけなければ」という気持ちが必要です。人により苦手な発音も当然違うでしょう。

子音の特徴をまとめてみます。まとめてみたところで果して効果があるものか。こんなことを考えてしまって書くのを躊躇してしまいました。 私って随分失礼なことを言っていますね。ごめんなさい。先週の土曜日6時からS/H/I の三人で細々と練習をやっていたのですが、その時一人の発音に妙な響きがあったので直したのですが、どうやら癖になっているようでした。意識して直して歌えましたがその時に思ったので す。一人ずつ聴いて直していくのが一番手っ取り早い、と。読んで頭に入ってそれを実践してできるなら、たとえば「歌うドイツ語ハンドブック」と言う本が(株)ショパンから出ており、詳しく書かれていますからご参考にさなさるとよいでしょう。私が思いつくままに書いたところであまりご参考になるとは到底思えないのです。大体私だって指導される側の人間ですから。

しかしこうして書くことによって少なくとも私自身が子音のことを改めて考えることができます。足りないことは多々あるでしょうが最低限必要と思う事だけを書きます。

 まず破裂音です。日本語にもバビブベボ、等をはじめとして破裂音はあるのですが例えば「ばっっかねえー」などと「ば」に力を込めれば破裂する感じが出るのですが、普段の会話では破裂しないで穏やかに発音する人がほとんどではないでしょうか。はっきり破裂をきかせるということにはあまり慣れていない。しかしこれをしないとからしをつけない冷やし中華のようになってしまいます。お好みがあるでしょうが、これらができないとバッハの音楽にならないのではないかと思います。
   p、t、k、 無声
   b、d、g、 有声

 次は n です。上の歯の付け根に舌先をしっかりつけて発音します。nで響かすことができずによく三澤先生から注意を受けます。何度も何度もうけています。情けないくらいにうけています。厳しいことをいうようですが認識不足なのではないかと思います。そう難しいことではないと思うのですが。ハミングをするように息を流して響かせる時に舌先を所定の場所に置く感じです。nで鳴らそうと思?ている方がいらしたら鳴らそうとは思わないで響かせようと意識を変えて下さいね。一番のポイントだと思います。

 以前三澤先生は l を破裂音だとおっしゃいました。それを聞いて意識を変えたらできるようになってきました。前出の本には「流音」という種類だと書いてあります。それは、子音の発音中も声が流れてくるという音の種類とのことです。ポイントは上の歯の付け根あたりに舌先をもっていき(その時にはすでにlを響かせているーためる感じ)、舌を離す時にそれまでためていた空気を押し流すような感じで母音が流れる。liebenと言ってみて下さい。感じがおわかりですか? バッチリ決まると気持ちがいいでしょう。こういったひとつひとつの感覚を大事にすると歌っていてもっともっと楽しくなるのではないでしょうか。allen という言葉のようにlが二つ続く時には自分の中でしっかりlを二つ分歌いましょう。二つ分だという意識をきちんと持つことが大事です。

 f / v / w の時は前歯を下唇のぬれたところと接触させます。これを下唇の乾いた部分までかむようにしてしまったらやりすぎです。もっと浅い感じでいいのです。ちょっと下唇が前に出る感じです。母音を発音する前に十分息を流すような感じで子音をひびかせましょう。w で摩擦音を出すのがなかなか自分のものにならず、まだまだ私自身できません。やっているつもりでも、どうやら違うらしくその辺りの微妙 な違いは私にはよくわかりません。きっとやるべきことが全然足りないのだと思われます。

m は日本語でも発音するのでそれほど困難ではないと思います。語尾の時に口を閉じて響かせることは忘れないようにしましょう。語頭にきたときはlの時に響かせて母音を発音する前にためる感じを思い出して、ンm といった感じで母音を発音する前に息をためるようにするとmのあとに母音がきれいに出ます。母音がきれいに出たら気持ちがいい、きれいに出ないと気持ちが悪い、こんなことをちょっと感じてみるだけで意識が変わり、だんだんいつもきれいに出るようになるのではないでしょうか。ちょっと話がそれますが、先日のウムラウトの練習でイでもなくウでもなくuのウムラウトでもなく、幽霊のような母音がない発音を聞きました。あれは気持ち悪かった。無意識で母音を避けているのかもしれない。しかし母音がないなんて有り得ないことであり、変な習慣をつけてはいけない。自分で聴いて自分で納得しよう。

βに似ているエスツェット......おわかりいただけますか? これはご存じのようにssのことです。sが二つ分だという意識をもって歌いましょう。いつも濁らないsです。

r はなるべく前の方で巻舌にしましょう。語尾がerになるときにはあいまい母音にすることが多いです。昔にマタイを歌った方には昔の歌い方がしみついてしまうことがありがちですが、練習の時にまわりの音をきいて違うと思ったら直すようにしましょう。er以外でも語尾をあいまい母音にすることもあります。 巻舌ができないかた、そろそろなんらかの兆しはみられたでしょうか。あと一月半もあります。焦らず根気よく続けて下さい。

今回とりあげた子音はさほど多くはないですが、大事なことばかりだと思います。以前練習の時に取り上げてみた無声子音の練習を今一度ここに書きますのでご参考になさってください。

R P T K
R P T K
Sch Sch Sch Sch
S S S S
Ch Ch Ch Ch
Ft Ft Ft Ft
Pf-t Pf-t Pf-t Pf-t
歌う前に毎回練習するとすぐに覚えてしまいます。ひとつひとつ腹筋を使ってやってみると良いでしょう。

ではまた。ご健闘を祈ります。