その10:息について

送信日時 : 2004年 8月 16日 月曜日 15:37

浜松バッハ研究会のみなさま

お盆休みも終わり、十分リフレッシュできましたでしょうか?まだこれから、という方もいらっしゃるかもしれませんね。夏バテしないようにしっ かり栄養のあるものを食べて、疲れを感じたら睡眠をたっぷりとりましょう。いつも遅い時間にメールをお送りしている私は時折昼寝をしているのでご心配なく。

さて今日は先々週の練習で「よく息が長く続くね」というお声をかけていただき、息のことを書くことにしました。歌っている時に「もっと省エネで歌って」と言われて「はあ?」(何のこと?)と思う方は私だけではないでしょう。最近やっと「こういうことかな」となんとなくわかってきたように思います。

小谷実可子さんは4分間も水中に潜っていられるそうです。そういった特別の人を除けば、肺に一度に入る空気の量は男女差はあるでしょうが、そう変わらないのではないでしょうか。私もごく普通の肺活量しかないと思います。

「省エネで歌う」とはどういうことなのでしょうか。いま私が感じていることは歌い方によって空気を必要とする量が違うのではないか、ということです。本当かしら? 三澤先生のおっしゃるところの「何かにベタッと張り付いたように」歌うとどうしてもどこかで押しているから空気の分量が多く要るように思います。もちろん三澤先生が「そう歌いなさい」なんて言いません。先生は「声は自由だ」とおっしゃいます。

以前書いたことがあると思いますが、フォルテで歌うということは空気をたくさん送るということかどうかN先生に伺ったことがあります。そうしたらなんとおっしゃったか憶えていらっしゃいますか? 「そうではなくて響きを増す感じね。」とおっしゃいました。響きを増すのに空気は多く必要じゃないのかしら? とその時は思いました。

しかし今響きを考えて歌う時、確かに空気がたくさんあればいいというものではないな、と感じています。響きをつなげて、丸い響きで、音を充実させて、と考えている時に必要なことは息を「流す」ことであり、その量は多くを必要とするわけではないと思うのです。響く場所に息を流して当てる。確かに当てるのだが、ぶつける訳ではない。響きを広げる感じ。十分に響かせることを考え、口から直に空気を出さない。実際には響かせた空気だって口から出ているんでしょうけれど。息をたくさん使うと結局空気で「押して」しまうことになりかねないように思います。「押した」声には限界があると思います。ぶつけているから「広がり」がない。聴いているものにとってはかなりその印象は違うと思います。

もう一つ大事なことも一緒に考えてみましょう。ブレスー息継ぎーです。ブレスをとるときどんなことを注意していますか? よく早川が言っているのはブレスをする時に一拍なら一拍分しっかり時間をとる、ということですね。時間をとらずにブレスをとっていない他の人と同じように歌おうとしても物理的に無理があります。他には?

私が個人的によく注意されたのは「ブレスのあとの体の立て直しを早く」ということでした。「?」 ですか? 息をたっぷり取込む事も大事です。また気をつけないとブレスしたあと無意識に天井まで下がってしまうのです。天井が下がると音を下からずりあげてしまったり 、少し高めの音でも無理が生じ響きのない堅い音になってしまったりします。響きがうしろにおっこちてしまったりといい事はありません。しかしブレスのあとも天井を高く保つことができるようになるととても楽になります。ゆとりができます。

体の立て直し、というのは天井の位置の事だけではなく、お腹の支え、横隔膜のお盆、のことも忘れてはいけません。胸の浅い所だけに空気を満たし満足する、ということはないと思いますが、一回のブレスで肺だけでなく下腹や背中などにも瞬時に息を入れるよう心掛けてみましょう。体の立て直しがうまくできないまま次にブレスしても息がたくさんはいらないのではないでしょうか。一回のブレスのときにその都度「トトロの体型になる」とでも思っていただいていいと思います。

ある程度ブレスの位置がわかっている時はいいのですが、切れ目なく続いてしまってどこで切ったらいいのかわからない時に、自分で考えてうまくカンニングブレスをすることが私はどちらかというと苦手です。以前ソプラノにいらした毛利さんはとても上手でした。隣で歌っていてもどこでしているのかわからないくらい上手にカンニングブレスをしていらっしゃいました。大きくブレスをするわけでなく、ちょっとサッとブレスして長もちさせるー省エネーのでしょう。合唱なのだからどこで切っても大丈夫、なんて思っているとけっこうブチ切れになってしまうものです。ここは決めておくべき、というところが各パートにあると思います。どこで切ったらいいかわからない時には各パート内でブレスの場所を決めておく事も大事ですね。

また、息がないまま頑張って歌っていると音が落ちてしまいます。線が細くなって物足りない。自分自身結構頑張ってしまう方なので、無理しないでカンニングブレスをし易い言葉を探したりします。一回の練習の中でも「また足りない」と何回思う事か。一応思いながらも何回か歌ううちに「ここでしよう」と考えて改善しているつもりです。何回歌っても行き当たりばったりというのは避けるべきでしょう。「また足りない」というときには前出の体の立て直しがうまくできなかったから、ということも大いにあります。

さあ「発声を変えよう」も残り2回を残すのみとなりました。何か取り上げてほしい事などありましたら、私が書けるかどうかはわかりませんがお知らせ下さい。9月5日が楽しみですね。レッスンの最初の曲でだいたいいつも「面白みがない」ようなことを言われてしまうことが多いです。表現する楽しさと理性を忘れずに合唱したいですね。