その08:癖について

送信日時 : 2004年 8月 7日 土曜日 0:13

浜松バッハ研究会のみなさま

前回の7で「お盆の上でころがす」、というところで横隔膜がお盆というのはいいけれど、どう考えても転がすのは頭の上の方だなあ、と思っています。頭の上の方にもお盆があるような。いろんな色のビー玉がその上で転がるの。

さて9月5日まであと一月ほどになりました。三澤先生は「ナディーヌ」、「ジークフリートの冒険」の本番を控え、忙しさの渦中にいらっしゃることでしょう。私たちはやっと8声の曲を一通り終えたところですが、あとは9月のレッスンまで歌い込んでいきましょう。

今回は「癖」について考えてみましょう。これまでにも文中で「癖」については少し話として出てきていると思います。昔歌った時の歌い方と今の歌い方が違っているのに気が付かずに昔の歌い方で歌ってしまったり、知らず知らずのうちにレガートで歌うべきところをアクセントを付けて歌ってしまうとか、言葉の発音をそのつもりでなくても間違えて歌っている.........などが今までに登場しました。

「癖」は発声に関することと、歌い方に関することに分けられるように思います。「発声を変えよう」というくらいですから発声に関することを重要視したいところですが、私はどちらも放っておいてはいけないことだと思います。例えば三澤先生から常々「息を吸うのが遅い」―準備ができないと注意されるのは、発声の基本ーフォームを作ることーが習慣によりできていない=癖になっていると言えると思われます。一方1番のソプラノの歌い出しのミソシミのオクターブを一息で歌うことができずに上のミだけを飛び出して歌ってしまうーわかっていながら練習してもできないところだったりする訳ですが曲の出だしだけに妥協したくない。もっとも元をたどればこれも十分発声に関することの部類になると思います。

私自身気付いていない癖が存在するはずです。もちろん気付いている癖もあります。みなさんもきっとそうだと思います。気付いていながら努力してもできない、気付いていながら「まあこんなもんか」と思う、或は自分には癖なんて存在しないと思う、など癖そのものの内容にもよるでしょうが 癖にたいする対応・感じ方は人によってまちまちでしょう。

しかしながら私たちは一緒に合唱するのですから、表現をそろえることはとても大事なことであり、個人的な癖を放っておくことはできないでしょう。合唱は個人プレーではなく共に一つになって表現するのですから。ではその個人的な癖をその人に面と向かって注意することができるかというと、なかなか困難だったりします。注意しあえる関係が一番良いのでしょうが、なかなか現実的には難しいことだと思われます。いろんな人がいて合唱にきている目的も同じようでいてそれぞれが微妙に異なっているのではないでしょうか。注意されたその受け止め方が人によって違うと思います。

では注意しないで合唱がうまくなれるか、というと当然そんなことはありえないことです。どうしたらいいのでしょうか。誰とは言わず注意されたことを、とりあえず自分のことか?と自問してみる。よくパート別で歌った時に注意されることを、たとえパートは違ってもよく聞いて納得する。その時先生の注意したことばかりに気をつけるのではなくて、実際に歌っているパートのうた声に耳を傾ける。例えば同じテーマを歌ってもパートによって歌い方が違うことは割合いよくあることです。パートの癖とでもいうのでしょうか。自分の耳で聴くことで、癖をひとつひとつ見つけてなくす努力をしてみましょう。

こうして考えていくと個人に癖が存在するように、バッハ研に癖が存在するのはごくあたりまえですね。これはある人(部内者)の強い主張ですが、「バッハ研は出だしのタイミングできれいに音が鳴らない」とのこと。また「メリスマが滑らかに歌えない」。いかがでしょうか、耳が痛いですね。発声がきちんとしてくれば(これが難しいのですが)、歌い方に関することというのは、要求どおりたやすく変えられるようになると思います。だから三澤先生も「発声が変わらないと」とおっしゃったのだと思います。

例えば発声に関することは........

フォームを作らず歌い出す
息を無駄に使ってしまい、すぐエンストしてしまう
コラールで2小節歌うと決まったように息継ぎしてしまう
歌う音に対して下からしゃくりあげるように入ってしまう
音を出してから音を探ってしまう
響きを後ろに落としてしまう
母音の響きが浅い
ビブラートをかけてしまう
母音がきれいに響かない
  などなど

歌い方に関することは.......

レガートに歌えない・・・・アクセントをつけたように歌ってしまう
強く欲しいところにグシャっと子音をぶつけてしまったり、
考えてみたけれど歌い方に関する癖というのは、気をつければ自分で気付くことができます。スタッカートで歌うべきところを切れが悪かったり、ある単語に重きを置いてあとを軽く歌うべきところをベタッと歌ってしまったり、ありとあらゆるところにいろいろありますが、他の人や他のパートをよく聴くと気付くことがあります。

癖を見つけるのは難しいけれど、まわりをよく聴いて、そして注意されたことを「なるほど」と理解しながら直していくと自ずと自分の歌い方、できないことなどがわかってくる。時には注意されたことに「何故?」と疑問がわくことがあってもおかしくない。「どうしたら直せるか」と考えてみることも大事であろう。発声に関することはすぐに直せるというものではないことが多いだろうが、「直したい」と思うことが原動力になるだろうから、まず「知って」「考えて」「やって」みよう。よっぽどの人でない限り、できないことはたくさんあるはず。だから練習が楽しい。音がとれたら「歌える」というものではないんですね。奥深いです。ふぅ*_*>>